理事長が医療法人と取引すると利益相反取引になりますか?-前編-

こんにちは。税理士の竹居です。

医療法人の理事長からのご質問です。医療法人が所有している車両が古くなったので、法人から購入

しようと思っている。この場合は利益相反取引になり、主務官庁に特別代理人を選任しなければならず

面倒なことになると聞いた。利益相反取引について詳しく教えて欲しい。

 

 医療法人と理事長個人が直接取引を行う場合は、医療法人が不利益を被る可能性が高く、このような

取引のことを利益相反取引といいます。

ここに医療法人所有の土地を理事長個人が購入する場合を例に考えてみましょう。

土地の売買契約の当事者として、売主は医療法人の業務執行代表者である理事長が務め、買主が

理事長個人であるとすると、売主も買主も同一人物という図式になります。

このような取引が行われる場合、一般的に考えられることは買主である理事長個人は相場より安い金額

で購入したいと考え、売主である医療法人は相場より安い金額であることを知りながら売却する可能性

があるということです。

医療法人が相場より安い金額で売却すると、医療法人は不利益を被る一方、理事長個人は相場より

安い金額で購入することができ、利益を受けることになります。

このように利害関係が一致することにより、医療法人の利益を犠牲にして理事長個人の利益を優先する

可能性のある行為を「利益相反取引」といい、医療法46条の4⑥で利益相反取引について特別代理人

を選任することが規定されています。 

法  律

条  文

医療法46条の4⑥

 医療法人と理事との取引が相反する事項については、理事は代理権を有しない。この場合においては、都道府県知事は、利害関係人の請求により又は職権で、独別代理人を選任しなければならない。

 医療法人の大半を占める一人医師医療法人である社団医療法人は、うっかりすると公私混同をして

しまうケースがあります。

 ただし、全ての取引が利益相反取引に該当する訳ではありませんので、利益相反取引に該当する

ものと、該当しないものを表形式で作成しました。  

利益相反取引に該当する場合

利益相反取引に該当しない場合

・医療法人を売主とし、理事長個人を買主とする

 売買行為 

・理事長個人を売主とし、医療法人を買主とする

 売買行為

 ・医療法人を借主とし、理事長個人を貸主とする

 賃貸借行為

 ・医療法人を貸主とし、理事長個人を借主とする

 金銭貸付(利子の有無を問わない) 

・医療法人を借主とし、理事長個人を貸主とする

 有利子の金銭貸付

 ・医療法人から理事長個人への贈与

 ・理事長個人の借入に対して、医療法人の資産

 を担保とする場合 

・理事長個人が医療法人に対して財産の無償

 贈与を行う場合 

・医療法人を借主とし、理事長個人を貸主とする

 無利子・無担保の金銭貸付行為 

・医療法人の借入について、理事長個人が個人

 保証をする行為 

・医療法人の債務について理事長個人が債務

 の引き受けをする行為

  

 利益相反取引に該当する場合と該当しない場合についてご理解されましたでしょうか。

今回のご質問のケースを表に照らし合わせると、利益相反取引に該当します。

次回は利益相反取引に該当する場合の手続きについてご説明します。 つづく・・・

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